ラジオスカウティング入門
(1)
ボーイスカウトに於けるアマチュア無線の利用について
1994年8月
ボーイスカウト滋賀連盟 大津第12団 中澤 勝
WORLDWIDE COMMUNICATION
BY
SCOUT HAM RADIO STATIONS
ボーイスカウトに於けるアマチュア無線の利用について
ボーイスカウトに於ける電波の利用は極めて早く、大正時代にスカウトによ る無線通信が実験局として試みられました。昭和20年代後半にアマチュア無線 が一般に認可になると、当時無線通信に興味を持っていた若い指導者達が率先し て取り組むようになりました。当時はメーカー品は全くなく、国内や海外でアマ チュア無線を始めた人たちが試行錯誤の中で実験し、成功した実験報告をお互い に交換したり、無線関係の雑誌を読み漁ったりして、一生懸命勉強しなければな りませんでした。また、米軍が放出した軍事用の無線機を購入して設計を研究し 、まだ利用出来る部品を取り外したり、足らない電気部品を買い集めて、無線機 を製作するところから、始まりました。
アマチュア無線の国家試験も、最初は第1級と2級しかなく、極めて難しい 試験に合格しないことにはアマチュア局を開設することが出来なかったのです。
その後日本アマチュア無線連盟が組織され、連盟の役員をされた先輩達の努 力によって、だれでも手軽にアマチュア無線を楽しめるようにと、電信級(現3 級)
電話級(現4級)の資格が創設されるようになり、中学生、高校生のハムが全 国に誕生するようになりました。
ボーイスカウトでも、全国で第4級アマチュア無線技士の資格を取得したス カウトや指導者が急増しました。最近では第1級・第2級の上級ハムの資格を取 得された指導者も大勢誕生するようになり、全国各地で電波の正しい利用のしか たについて、指導されるようになってきました。
1.手軽な無線
無線の利用も最近は一般化して、だれでもが何の資格もなしで利用出来るよ うにと、特定小電力無線が認可になりました。スキー場などでの仲間同士の連絡 や、工事現場、駐車場などで頻繁に利用されるようになり、皆様も何度か目にし ておられると思います。
この無線は「無線従事者免許」、「無線局免許」を取る必要がありませんの で、無線機を買ったその時から使用することができる、大変便利なものです。
無線機も家電ショップやディスカウントショップで販売していますので、全 国何処でも容易に購入する事が出来ます。最近は多くの大手電気メーカー、通信 機メーカーが競って生産するようになりましたので、製品の内容も随分よくなり 、価格も最初に発売された頃から比べると随分安くなりました。新型、旧型で差 がありますが、すこし旧式のものですと2万円以下で購入する事も可能なようで す。
スカウト活動にはもってこいのものでありますが、免許がいらないだけに送 信出力も0.01W(ワット)と極めて小さく制限されており、アンテナも付属 のホイップアンテナ以外に使用する事は出来ません。
通信可能な距離は直線で2〜300メートル位しかありませんから、自ずと 利用の範囲は決まってしまいます。
しかし、スカウト活動における連絡事項は、大体この範囲内で大半の事がカ バー出来るわけですから、だれでも使う事ができるこの無線を、今後大いに利用 して行けば良いのではないかと思います。
資格を必要としない無線にパーソナル無線があります。パーソナル無線は、 外部にアンテナを設置する事も出来、出力も5Wと比較的大きく、通信可能な距 離も5〜20キロメートルと延びます。
これも「無線従事者」免許のいらない便利なものですが、「無線局免許」は 電気通信管理局に申請して取得しなければなりません。10年程前に認可になっ たもので、当時は大手電気メーカーが競って生産しましたが、その利用者の大半 が土木工事関係の車両に乗車している運転手に占められてしまい、一般の方が同 じように無線を楽しむという当初の目的から、余りにもかけはなれた利用のしか たになってしまいました。
現在はダンプ専門の無線のようになってしまい、通信内容についてもあまり 好ましくないものが多く、スカウトに利用させるのには躊躇します。
2.アマチュア無線について
さて、スカウト活動に最も適している無線となれば、国家試験に合格して「 無線従事者」の資格を取得し、「アマチュア局」の免許を取得しなければなりま せ
んが、やはりアマチュア無線と言う事になります。
アマチュア無線はアマチュア業務を行う無線であり、その利用の仕方は電波 法に規定された方法でおこなわなければなりません。
アマチュア業務とは「金銭上の利益のためでなく、専ら個人的な無線技術の 興味によって行う、自己訓練、通信及び技術的研究の業務を言う」と規定されて います。 つまり、工事現場や駐車場の連絡など、仕事に関する連絡の通信は一 切行ってはならないのです。あくまでも個人的な利用に限定されています。
アマチュア無線は1.9〜28MHZ(メガヘルツ)の短波帯(HF)、5 0〜144MHZの超短波帯(VHF)、430MHZ〜1200MHZの極超 短波帯(UHF)等多くの周波数帯を使用する事が出来ますので、その通信の目 的によって周波数帯を使い分ける事が出来ます。(15頁を参照して下さい)
例えば、スカウトのキャンプやハイキングで利用する時は、VHFの144 MHZ若しくはUHFの430MHZ、国内通信をするならばHFの7MHZ、 国際通信をするならばHFの10・14・21又は28MHZと言うように、目 的に応じた電波を利用する事が出来るのです。
3.JOTA (Jamboree On The Air)
世界中のボーイスカウト・ガールスカウトが、電波を通じてのジャンボリー ・オン・ジ・エアー(10月第3土、日の48時間)、シンキング・デー・オン ・ジ・エアー(TDOTA 2月第3土、日の48時間)を毎年開催している事 は、スカウティング誌で皆様ご存知の通りであります。
毎年参加者が増えてきて、この時は世界中のスカウトの声があらゆる周波数 帯で賑やかに聞こえるようになってまいりました。
この催しは世界スカウト機構が提唱し、全世界のスカウト連盟が参加してい る大規模なもので、今年で37年目になります。
交信したスカウトハム同士は、第○○回JOTAと記入したQSLカード( 交信証明カード)を交換しますので、世界各地からスカウトハムの素敵なQSL カードが届きます。
それぞれのカードが個性的であり、ラジオスカウティングの世界共通のマー クが印刷してありますので、とても楽しいものです。
また、報告書を提出しますと世界スカウト機構から、運用者と聴取者に記念 のJOTA参加カードが各自に届きます。
昨年、一昨年は世界タワー協会の招待をうけ、日本連盟は東京タワーに登り 移動運用を行いました。イギリスはロンドンタワー、フランスはエッフェル塔、 オーストラリアはシドニータワーから等、世界各国のタワーからボーイスカウト の無線局が運用して、世界中のハムを驚かせました。
(世界中で一般のアマチュア局はタワーからのアマチュア無線の運用は自粛す る事になっており、申請しても許可されることはまずありません)
CQジャンボリーの呼びかけで、世界中のスカウトハムが交信を求めていま す。
スカウト運動が国際的な運動であることを、居ながらにして実感出来るのは スカウトハムだけの特権です。でも資格を持っていないスカウトでも、アマチュ ア無線の電波を聴取することで、間接的にこの行事に参加することが出来ます。
そして、興味を覚えたら、アマチュア無線の資格を取得するためのインフォ メーションを、得ることができるでしょう。
最近では各県連や地区、団で社団局(クラブ)を開設するようになり、ラジ オスカウティングはどんどんと広がりを見せるようになっています。
第1・2級アマチュア無線技士の上級資格を持つ指導者もたくさん誕生して おり、その方達が中心となって、アマチュア無線国家試験にむけての勉強会を開 催されています。またJARD(日本アマチュア無線振興協会)の第3・4級ア マチュア無線技士養成講習会の講師として、アマチュア無線の資格を取得する為 の指導をされていますので、興味のあるスカウトや指導者の方は、知り合いのス カウトハムに受験方法を訪ねて、受験(受講)される事をお勧めします。
4.JA1YSS(Young Scout Station)
我国のボーイスカウトに於けるアマチュア無線の利用は、1966年の第4 回日本ジャンボリー(岡山県日本原)でボーイスカウトによるアマチュア無線局 の運用をしようと、関東、東海に在住している当時の若いスカウトリーダーが中 心となって、故松平頼明先生(JA1JAM)を会長として、日本連盟内に日本 ボーイスカウトアマチュア無線クラブ「JA1YSS」を設立した頃から始まり ます。その設立準備期間を算入すると、約30年の経験を経て来た事になります 。
設立当時は最大出力10Wの移動局で、自作の無線機器を中心に、細々と電 波を発射していましたが、その後ボーイスカウト会館が三鷹に建設されるに時に 、アマチュア無線用のタワーも建設されましたので、クラブ員みんなで募金をし て新しい無線機やアンテナを購入し、自分達でタワーへの取付工事をして、関東 電気通信管理局(当時は関東電波管理局)の落成検査を受け、JA1YSSは第 1級のアマチュア無線社団局(最大出力500Wの固定局と50Wの移動局)と なり、ボーイスカウト日本連盟の無線局として世界中に有名になりました。
JOTAの時には日本を代表するスカウトステーションとして、国内はもと より、世界中に電波を発射し、国際交流に大いに貢献しています。
また、世界中からラジオスカウティングに関する研究資料を収拾し、会員を 通じてスカウト活動の活性化に貢献しています。
現在は、全国のスカウト指導者でラジオスカウティングに関心を持たれてい る方が、正会員(特別維持基金会員、維持基金会員)、成人会員となり、JA1 YSSの維持管理にあたると共に、スカウティングに於ける電波の正しい利用の 推進の為に、研鑽を積まれています。
主な活動は、JOTAへの参加及び啓蒙、国内JOTAの実施(5月5日) 、ジャンボリー特設アマチュア無線局(特別記念局)の設置及び運営、シニアー スカウト大会(NV)やローバームート(RM)での移動局運用、等全国各地で 活動しています。
正会員、成人会員には世界中のラジオスカウティングに関する情報が、いち 早く直接郵送されますので、指導者の方は正会員になられる事をお勧めします。
5.無線従事者資格
アマチュア無線の電波を利用するには、第1〜第4級アマチュア無線技士、 もしくは第1〜第3級総合無線通信士、航空無線通信士、海上無線通信士、陸上 無線技術士の資格を持っていなければなりません。
アマチュア無線の免許を取得するには、全国で行われる国家試験(第1級〜 第4級)を受験して合格するか、もしくは(財)日本アマチュア無線振興協会が 開催する第4級アマチュア無線技士養成講習会を受講し、終了試験に合格して無 線従事者の資格を取得しなければなりません。
アマチュア無線の電波を発射すると言うことは、短波帯の電波は世界中に飛 んで行くわけですから、世界中の国々が電波利用の為に条約を結び、それぞれの 国で法律を作り、電波の有効な利用に努力しています。
国際電気通信条約(以降ITUと言う)に於いて、アマチュア局の必須条件 として「モールス信号の理解出来る者でなくてはならない」と規定し、安易に免 許を与える事を禁じています。
しかしその条文の後段において、「専ら30MHZ帯以上の周波数を使用す る局には、この要件を課すことを要しない」としているのです。
そして「主管庁は、アマチュア局の操作を希望する者の運用上及び技術上の資格を検証する為に必要と認める処置を執る」と規定しています。
日本においては、モールス信号の理解出来ない第4級アマチュア無線技士 にも“送信出力を10W以下に制限すれば電波は海外迄飛ばないだろう”との考 えの基に、HF帯(30MHZ以下の周波数を利用する10の周波数帯)の半分 以上の使用を認可しています。しかし無線技術の急激な進歩に伴ってたった10 Wの電波でも、上空250〜400KMにある電離層で強い反射がおこった時な どには、思いもかけない外国のハムと交信する事もできようになりました。
中学生、高校生のスカウトにとって、無線の電波を通じて地球の反対側のハ ムと交信出来るなどと言う事は、大変な驚きと喜びであり、初めて外国の無線局 と交信したの時の感動は終生忘れる事は無いでしょう。
ただ、第4級アマチュア無線技士の試験は国際通信を行うのに必要な法律に ついての設題がありませんので、国内通信だけに止めておくべきでしょう。
さて、ITUの言う「運用上及び技術上の資格の検証」とは、わが国のアマ チュア無線技士国家試験のどの程度のものを言うのでしょうか。
第4級(1.9・10・14・18MHZ帯を除く無線電話、最大出力10 W)の試験にはモールス信号についての試験がありませんので、これを除外しま す。
第3級(10・14MHZ帯を除くオールモード、最大出力25W)の試験 は第4級の学科試験を少し拡大し、ごく簡単なモールス信号の受信を付加してい ますので国際的には入門コースと考えられますが、ITUの求める資格にはまだ 程遠いものです。
第2級になりますと試験の内容はがらりと変わり、1分間45文字の欧文モ ールス信号の受信と、高度な無線工学や国際通信を行うのに必要なITU条約な どの無線法規の学科試験が沢山出題されますので、4級・3級から比べますと驚 くほど難しくなります。
従って国際的な「運用上及び技術上の資格の検証」を受けた者とは、第1級 及び第2級アマチュア無線技士の資格を取得している者という事になります。
第1級アマチュア無線技士(オールバンド・オールモード、最大出力500 W) 第2級アマチュア無線技士(オールバンド・オールモード、最大出力10 0W)の事を上級ハムというのは、国際レベルに達したハムと言うことに他なりません。100Wあ れば、短波帯で国際通信に最も適した10・14MHZ帯の電波は、電離層で反 射して世界中どこへでも飛んで行きます。(第1級は出力に制限がありませんが 、500W以下に自主規制しています)
第3級・第4級ハムのことを初級ハムと言います。第4級については国際法 で定められているモールス信号の試験を受けていないので、ノンライセンスハム とも言います。第3・4級と第1・2級の間には大きなレベル差があります。
第1・2級の試験に挑戦しようとされる方は極めて少なく、一生懸命勉強し て受験される方でも合格率はかなり低いようです。(公表されていないが、30 %程度と推定される)
最近の統計によりますと、全国でアマチュア無線技士の免許を受けた者は、 約250万人にのぼりますが、そのうち第1級の免許を受けた者は1.5万人で 率にして0.5%、第2級の免許を受けた者は6.3万人、2.5%にしか過ぎ ません。第3級が12.5万人、5.0%、第4級が219.7万人、92.0 %です。
第1・2級全員を合わせても全体の3.0%にしか過ぎないのに、ボーイス カウトではジャンボリーに奉仕しているスカウト指導者の中で、20名近くの優 秀な上級資格者を揃えているのです。
6.ジャンボリー特設局
ジャンボリーの特設アマチュア無線局は、一般の社団局(クラブ)とは異な り、国際的な奉仕団体が開催する、国家的な大規模な行事の時だけに、その運用 期間を定めて認可される、特別なコールサイン(呼出符号)を付与されたアマチ ュア無線局で、日本では(社)日本アマチュア無線連盟(JARL)がハムフェ アーやEXPO等の時に設置する記念局以外では、4年に1度開催されるボーイ スカウトジャンボリーの時に、日本ボーイスカウトアマチュア無線クラブにしか 認可されていません。
それは、ボーイスカウトが国際的な奉仕活動を行う団体である事が、所轄官 庁である郵政省に認められているからでありますが、それだけでは特設局の認可 を得ることは出来ないのです。即ち、特設局の運用が、上級ハムの指導の基に正しく行われている事が、郵政省に認められているからであります。
4NJ 1966年 岡山 日本原 JA1YSS/4
この時はまだ最大出力10Wの移動局でした
5NJ 1970年 静岡 朝霧高原 JH2BSJ
この年から最大出力500Wの特設局になりました
BSJはBoy Scout Jamboreeから取っています
13WJ 1971年 静岡 朝霧高原 8J1WJ
8Jのプリフィックス(国を表す記号)は南極の昭和基地8J1RL しか認可されておらず、日本国内では初めての認可で、同時に外国人 の運 用もこの特設局に限り許可されました
WJはWorld Jamboreeから取っています
6NJ 1974年 北海道 千歳原 JH8BSJ
7NJ 1978年 静岡 御殿場 JH2BSJ
8NJ 1982年 宮城 南蔵王 8J7BSJ
この年から国内ジャンボリーでも8Jを認可されるようになりました
9NJ 1986年 宮城 南蔵王 8J7BSJ
ゼロ
10NJ 1990年 新潟 妙高高原 8JφBSJ
今夏大分県久住高原で開催されました11NJでは、8J6BSJのコールサインを申請し、厳しい落成検査を受けて認可されました。
スカウトがジャンボリー特設アマチュア局を運用するには、当然の事であり ますが、無線機とアンテナを常に最良の状態に調整し、電波法を遵守し、正しく 行わなければなりません。
しかし、第3、4級アマチュア無線技士資格程度の勉強では、国際通信を行 う短波帯(30MHZ以下)の無線機器を正しく調整する事は、まずもって出来 ません。また、国際通信を行う場合に必要な、国際電気通信条約等の国際法規に ついても勉強していませんので、単独で国際通信を行うことは好ましくありませ ん。
その為に第1級又は2級アマチュア無線技士、若しくは第1〜第3級総合無 線通信士の上級資格を持ったスカウト指導者を、ジャンボリー特設アマチュア無 線局の運用監督者に任命し、運用監督者の指導監督の基に、無線従事者資格を取得しているスカ ウトに、無線局の運用を許可する事になります。
無線従事者免許証を持って、10NJの特設局を運用する為に訪ねてくれた スカウト、スカウターは800名をオーバー致しました。
無線機の数に限りがありますのでゆっくりと交信を楽しんで貰う事は出来ま せんでしたが、みんな嬉しそうに記念のアイボールカード(訪問証明書)と、自 分が特設局で交信した内容を記載する「無線業務日誌」の控えに運用監督者の確 認のサインを貰い、宝物のように大切に持って帰ってくれました。
ジャンボリー終了後も多くのスカウト・指導者から、特設アマチュア無線局 での感動を手紙でよせてくれています。
今夏のジャンボリーには、その感動を覚えたスカウトがローバースカウトや 指導者となり、無線の上級資格を取得したので是非運用監督者として特設局に奉 仕させて頂きたいと申し出てくれましたので、大変嬉しく思っています。
7.運用監督者
ジャンボリー特設アマチュア局のスタッフは、上級ハムの資格を有するベテ ランと新進気鋭の上級ハムを中心として構成されます。第3・4級資格者の場合 は深い経験と確かな無線技術、通信技術を持つ者が任命されています。
運用監督者は無線局を設営するに当たり最も重要なタワーの建設、ワイヤー アンテナの製作及び調整、無線機器の接地工事(アース)、調整や電波障害につ いての対策も、すべてボーイスカウトだけで完璧に実施することが可能な、優秀 な人材を揃えています。
過去のジャンボリーで特設局の落成検査に来られた電気通信管理局検査官も 、人材の豊富さにいつも感心されています。一般の社団局ではこれだけ優秀な人 材を一堂に揃える事は、極めて難しいと言っても過言ではありません。
アンテナ装置の完成、そして電気通信管理局の「落成検査」に合格した後は 、運用監督者はスカウトが無線電波を発射するに当たり、側に付いて無線機器の 調整をし、正しい運用方法を指導する事を任務としています。
即ち特設局はジャンボリーに参加するすべてのスカウトの為に開設するので あり、運用監督者がアマチュア無線を楽しむ為のものではないのであります。
しかし、特設局を開設すると言う事は、対外的(全世界に対して)にも大き な責任を生じる事になり、その為に運用監督者が無線局を運用する事があります 。
その第一番目は、世界中のスカウト連盟、地区、団、個人のハムと、電波を 通じてジャンボリー会場を結び、ジャンボリーや常日頃の活動の情報を交歓する 事であります。つまり、世界中のスカウトハムは、このシーズンに全世界で行わ れる各国のジャンボリー特設局との交信を希望しているのであり、それに応えな ければならないのです。
第二番目は、世界中の一般のハムも特設局との交信を希望していますので、 可能な限り一般のハムとの交信もしなければなりません。
その対外的な義務を果たす為に、短波帯での運用実績の豊富な運用監督者が 、スカウトが比較的無線局に来ない時間帯(早朝、昼食時、夕食時、深夜等)を 利用して、100W〜500Wの出力で特設局を運用し、交信に当たる事になり ます。その為に運用監督者はジャンボリースタッフ用の食堂で食事を取る事は殆 ど出来ず、一日に3回とも食堂より弁当の配給を受けているのです。
8.そなえよつねに
特設局では毎時10分と40分に、短波帯の電波で気象ファクシミリによる 天気図の受信を行い、台風や急激な気候の変化にすばやく対応出来るよう、万全 の準備をしています。
また、短波帯の電波を使って全国のアマチュア局と交信することで、台風が 接近している地域や、通過した地域のハムから最新の台風情報を、瞬時に入手す ることが出来ます。
この情報はジャンボリーの大会本部(GHQ)総務部にすぐ連絡され、緊急 の避難が必要か否か、またその時期はどうかという判断の参考にされています。
台風など急激な気象の変化は、スカウト達に非常に不安を抱かせますが、ハ ンディー・トランシーバーを持参しているスカウトハムは、特設局からの台風情 報をいち早く知ることができますので、万全の対策を持って自然の脅威に対応す ることができます。
また、所属隊の指導者に特設局からの情報を連絡することで、緊急時におけ るアマチュア無線を利用した情報収集を身をもって経験する事が出来ます。
このような通信は、目的外通信と呼ばれるもので、アマチュア業務から逸脱 するものですが、電波法によって認められているものです。(非常通信といいま す)
9.エピローグ
スカウト指導者の中で、無線の免許を持っておられる方は、この20年ほど で驚異的なスピードで増えました。その中で上級ハムの資格を取得されている指 導者は、一般のアマチュア局と比較するとかなり多くなってきており、その方々 が中心となって各県連盟や地区、団で社団局(クラブ局)を設立し、電波の正し い利用について指導されています。
このように、ジャンボリー特設アマチュア無線局を運営する、日本ボーイス カウトアマチュア無線クラブは、日本のアマチュア無線社団局の中でも、極めて優秀な人材を揃えた超一流のアマチュア社団局ですので、一般のアマチュア局には認可される事がない、特 設アマチュア無線社団局(特別記念局)の免許を、日本で唯一得る事が出来るの です。
この事は30年以上に亘る先輩諸氏の地道な努力によって積み重ねられてき た実績の賜物であり、現在その恩恵を受けている私達はその栄光を引き継ぎ、将 来に向かって広く発展させ、スカウティングに於ける電波の正しい利用と楽しみ 方を啓蒙して行かねばならないのです。
10.名誉にかけて
アマチュア無線の利用は、まず「無線従事者」の免許をとってからです。勉 強を始めようと思ってから、受験申請、国家試験受験若しくは養成講習会受講、 合格通知、無線従事者免許証の申請、無線従事者免許証の到着、アマチュア局開 局申請書類の提出、アマチュア局免許状の到着、無線機の購入、取付工事(家・ 自動車)と約6カ月の期間がかかります。
無資格、無免許での使用は絶対にいけません
スカウトの名誉にかけて、電波法、国際電気通信条約、関連諸規定を遵守し、電波を正しく利用して下 さい。
免許の取得方法については、各県連盟や地区で組織する社団局の責任者、お 知り合いのスカウトハム、(財)日本無線協会、(財)日本アマチュア無線振興 協会(JARD)、ハムショップ又は日本ボーイスカウトアマチュア無線クラブ にお問い合わせ下さい。
さいごに
ジャンボリー会場には、144・430MHZ帯のハンディー無線機の持ち込みを許可 していますので、各自が認可を得た無線機で特設アマチュア局と交信し、無線業 務日誌に記載すると共に、記念のQSLカード(交信証明証)を手に入れて下さ い。
特設局ではスカウトハム同士の交信数によってジャンボリースカウトハムア ワード(賞状)を発行していますので、会場内で他のスカウトハムと交信し、お 互いに場所をきめて落ち合いQSLカードの交換をして友情を暖めると共に、頑 張ってアワードを獲得して下さい。また、特設局では毎日アイボールミーティング(交歓 会)をしていますので、自分のQSLカードを持っていつでも気軽に訪ねて下さ い。
特設局には、3・4級ハム用の10W送受信機を中心に、上級者用の100 W送受信機、500Wのリニアアンプ、コンピューターを利用したパケット通信 装置等、最新の無線機器が揃っていますので、それぞれの資格に応じた出力の無 線機を使って交信する事ができます。ジャンボリーの特設局を運用するというこ とは、一生を通じても滅多にあることではありませんので、アマチュア無線の資 格を持っているスカウトや指導者の方は、どうか特設局でアマチュア無線を楽し んで下さい。
スカウトの運用出来る時間帯は選択プログラムに参加している時間帯だけで すので、スカウトの皆さんは時間をうまく使って特設局を運用して下さい。
指導者の方も、各自に与えられた任務に支障のない範囲で、特設局の運用が 出来ます。スカウトが優先しますので上記以外の時間帯をご利用ください。ただ し、夜間は午後8時30分までとします。
その他にも無線通信章、電気章、ラジオ章、有線通信章等、技能章に関する 研究資料を掲示します。技術的なことでは、ハンダづけやテスターの使い方の指 導も行いますので、なんでも体験して下さい。
今回ジャンボリーでお会いしたスカウトハムの皆さん、10月のJOTAで またお会いしましょう。今回アマチュア無線に興味を持ってくれたスカウト・指 導者の皆さん、これから勉強して試験に合格し、アマチュア局になってスカウト ハムの仲間になって下さい。そして来年のJOTAの時に、お空でお会いしまし ょう。それが私達ジャンボリー特設アマチュア局に奉仕したスタッフが一番嬉し く思う事です。
この文章は1993年10月にBS滋賀連盟シニアースカウト指導者研修会 で講演した時の参考資料として書いたものを、今夏のジャンボリーで指導者の皆 さんに配布出来るよう加筆したものです。アマチュア無線に興味の無い方にも理 解して頂けるように、出来るだけわかりやすく書いたつもりですが、表現の至ら ない処はお許し下さい。
ご意見、ご感想をお知らせ頂ければ幸いです
楽しいかなスカウティング、もっと楽しいラジオスカウティング!
中澤 勝 JH3FIN 滋賀連盟大津第12団 シニアー隊長
〒520-02 滋賀県大津市仰木の里6-12-3 TEL・FAX (0775)-72-3471
アマチュア局が使用できる主な周波数帯
| 周波数帯 | 波長 | 国内近 | 国内遠 | 海外近 | 海外遠 | その他 |
| ★1.9MHZ | 160M | ◎ | ◎ | △ | △ | CW |
| 3.5MHZ | 80M | ◎ | ◎ | △ | △ | |
| 3.8MHZ | 80M | ◎ | ◎ | △ | △ | |
| 7MHZ | 40M | ◎ | ◎ | △ | △ | 国内通信に最適 |
| ☆ 10MHZ | 30M | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | CW 国際通信 |
| ☆ 14MHZ | 20M | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 国際通信に最適 |
| ★ 18MHZ | 17M | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
| 21MHZ | 15M | ◎ | ○ | ◎ | ○ | |
| 24MHZ | 12M | ◎ | ○ | ◎ | ○ | |
| 28MHZ | 10M | ◎ | △ | △ | △ | |
| 50MHZ | 6M | ◎ | △ | △ | △ | |
| 144MHZ | 2M | ◎ | △ | × | × | モービルハムが多い |
| 430MHZ | 70CM | ◎ | × | × | × | モービルハムが多い |
| 1200MHZ | 25CM | ◎ | × | × | × | モービルハムが多い |
◎ 簡単に出来る ○ 割合簡単に出来る △ 時々出来る × 出来ない
★ 第3級以上 ☆ 第2級以上 CW 無線電信のみ
7MHZは国内通信に最も適した周波数ですが、それだけに全国でこの周波数を利 用されるハムが多く、従ってものすごい混信があります。10・14MHZは国際バンド と言い上級資格者しか許可になりません。主として国際通信をする周波数です。
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